2026.08.15
「Suno Studio 2.0」新機能「Chat bar」機能が神
執筆: 輪廻タヲ ・ AIを活用した音楽・イラスト・映像作品を制作するコンテンツクリエイター

Studio 2.0とは
2026年8月13日、Sunoが「Studio 2.0」を発表しました(公式発表)。
一言でいうと、曲を一発生成する画面ではなく、AIで作った音・自分で弾いたMIDI・録音・持ち込み音源を、同じタイムライン上で組み上げるブラウザ型の制作環境です。
Premier加入者向けで、新しく触れる機能は大きく4つ。実際に使ってみた感想もあわせて書いていきます。
Chat bar:会話で作業を進める(ベータ)
楽器・ボーカルの生成、プラグイン設計、セッション整理を会話で依頼できるベータ機能です。
「チャットに曲を頼んで終わり」ではなく、制作環境内で作業単位を補助する仕組みです。
使ってみたら
この機能、神です。
曲作りの時、自分はいつもClaudeと壁打ちしてプロンプトを作るのですが、それをプロジェクト内でそのままできます。
めちゃくちゃいいです。
「〇〇小節目のドラムのフィルをもっと激しく」
みたいな指示が普通に通るので、自分は直接操作するより、こちらをメインに使うと思います。
手で作業するより、これでガシガシ指示を飛ばしていったほうが早いです。
マイク入力に対応してくれたら最高です。
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@TaoRInne をフォローするMIDI:弾いたフレーズを生成の起点にする
MIDIをタイムラインに読み込み、録音・編集できるようになりました。
PCキーボードでも音が出せ、新設のウェーブテーブル・シンセで音色も作れます。
テキストでは指定できなかった「どの音をいつ鳴らすか」を人が直接置けるほか、MIDIクリップをそのまま新しいオーディオ生成のプロンプトにも使えます。
使ってみたら
非常に簡単に使えて、使いやすいです。
MIDIを生成する機能もあり、将来性を感じます。
ただ現状では、使える音色の品質が凡庸だったり、MIDIの生成もAIの解釈に難があったりと、求めている内容を作る、というところまでは至りませんでした。
アイデアとしては面白いよね、という段階だと思います。
オーディオ録音
タイムライン上で、直接オーディオを録音できる機能です。
使ってみたら
録音は非常に手軽にできます。イヤホン・ヘッドホンの使用がおすすめです。
録音した音をそのまま使うというより、それを素材にSunoに再生成させる使い方が面白いです。
ただ、MIDIと同様に、AIによる解析精度と生成クオリティには課題があります。
個人的には、このステム生成の品質があまり好みではなく、いまだにStudioでステムを個別に生成することはほとんどしていません。
前後の文脈を参照していないのか、面白みに欠ける内容になることが多い、という印象です。
生成時にモデルを選べるのも面白いポイントです。
生成の精度が上がれば革新的な機能なので、今後に期待したいところです。
テイクコンピングとオートメーション:候補を選び、時間軸で整える
新しいパートを生成すると2バージョンが作られ、Take Lanesで試聴・コンピングできます。
土台にはStudio 1.2の編集機能もあります。
・Warp Markers+Quantize:タイミングを伸縮しグリッドに合わせる/意図的にグルーヴを作る
・Alternates:複数案を1トラック内で整理・試聴
・拍子記号:4/4以外に6/8、7/8、11/4などへ対応
・Remove FX:エフェクトを外したバージョンを生成
これに加えて、トラックやプラグインのパラメータを時間軸で変えられるオートメーションも、初めて使えるようになりました。
候補を速く作り、人が選び、時間軸上で手直しする制作体験です。
使ってみたら
これは一般的なDAWに付属する機能なので、特に感想はありません。
Suno Studioで完結させたい人のための機能だと思います。
エフェクト・プラグイン:ミックスの意思を入れる
標準デバイスはサイドチェイン・コンプレッサーとコンボリューション・リバーブ。
Chat barで独自プラグインの設計もできます(開始時点でクレジット不要)。
確定している制限があります。
サードパーティ製のVSTプラグインには対応していません。シンセ・エフェクトはSuno純正のみです(出典)。
プロ用DAWとの違いとして、ここは断定して書ける事実です。
書き出しと既存DAWとの関係
既存DAWを置き換える宣言はなく、音声・MIDIの書き出しで持ち出せます。
Premierは32-bit/48kHzのマルチトラック/ステムを無制限でエクスポート可能。
Studio内で完結させるか、Logic Pro・Ableton Live・Cubaseなど慣れたDAWに持ち出して仕上げるか、の2通りが現実的です。
AI生成をDAWワークフローに接続する中間地点という位置づけです。
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@TaoRInne をフォローする使っていて感じた不満・要望
マスタリング専用のツールはほとんど実装されていない
実際に触って気づいたのは、個別トラックにはLimiterのようなプラグインを挿せるのに、マスタリングに特化したツールがほとんど実装されていないことです。
コンプやリバーブを各トラックに差し込んで作り込めるところまでは、かなり本格的です。
でも、曲全体の音圧・音像を最終的に整えるための専用機能や、プリセット・リファレンスのような仕組みは見当たりませんでした。
これは実装の抜けというより、Sunoがマスタリング品質の担保を意図的に避けているサインだと思います。
個別トラックのエフェクトなら「好みの範囲」で済みますが、マスタリング用のツールを充実させると、そのクオリティはSuno自身の音として評価されてしまう。
そこに踏み込まなかったのは、むしろ誠実な線引きに見えます。
裏を返せば、Studio 2.0でどれだけ作り込んでも、最後のマスタリングだけは、今も人の領域として残っているということです。
TAO MIX
自分がAI音楽専門のマスタリングサービス「TAO MIX」をやっているのも、まさにこの工程です。
Studio 2.0を触ってみて、その意味がより具体的にわかった気がします。現役のスタジオエンジニアとして、その部分を引き受けています。
AI音楽専門のマスタリングサービス「TAO MIX」の詳細はこちら
スタンドアローンアプリとして作ってほしい
環境によってですが、使うブラウザやスペックによって、再生遅延が起こったり、プチ音が出てしまったりします。
ブラウザDAWという仕様を使う以上、ユーザーのネット環境やブラウザ互換に影響を受けてしまいます。
スタンドアローンで、個別にバッファーを設定して運用できたほうが絶対にいいです。
生成の部分だけ、ネットを経由すればいいので。
それに、スタンドアローン化すれば、VSTプラグインや外部音源との互換性も期待できます。
ショートカットキーに対応してほしい
普段使っているDAWのショートカットに手が慣れているので、Studio独自の操作体系だと、その都度覚え直す必要があります。
既存DAWとのショートカット互換性(またはカスタマイズ機能)があれば、乗り換えのハードルはもっと下がるはずです。
StudioのアップデートとSunoエンジンの改新から見える、今後のSunoの方向性
Sunoは2025年6月、ブラウザDAW「WavTool」を買収しました(出典)。
Studioは初代からPremier向けの「Generative Audio Workstation」として位置づけられ、Warner Music Groupとの提携でも、プロ向けの強力な制作ツールとして無制限ダウンロード機能を維持するとしています。
ここから読めるのは、Sunoが一発生成の品質競争だけでなく、作曲・編曲・ミックスを繰り返す長い制作時間そのものへ価値を移そうとしている、ということです。
「ポン出し」から距離を取ろうとしている、という見方
これはSunoが明言した結論ではなく、機能と料金・権利方針をつないだ私見です。
MIDI、録音、テイク比較、ステム編集、オートメーションは、どれも「AIが出した完成曲をそのまま使う」ための機能ではありません。
ユーザーが自分のフレーズを入れ、候補を選び、構成を変え、音を整えるための機能です。
権利・事業の側面を重ねると、この見立てはさらに筋が通ります。
・通常のダウンロードには上限を設ける一方、Studioを使うPremierでは高品質マルチトラック/ステムの無制限書き出しを残している
・WMGとの提携では、ライセンス済み音楽で訓練する次世代モデルと、アーティストが参加を選ぶファン体験、報酬の仕組みを掲げた
・本人確認を伴うVoicesや、自分のカタログで作るCustom Modelsは、「誰の声・誰の音楽なのか」を個人へ寄せる設計
ただし、ここは言い切り過ぎないほうがいいと思います。
Studioの制作履歴が著作権侵害を自動で防ぐわけではなく、最終成果物の類似性や参照素材は別途問われます。
「DAWになった」と言い切れるか
Digital Music Newsの見出しも “Suno is Getting Closer to an Actual DAW”(実際のDAWに近づきつつある)という、留保つきの表現でした(出典)。
VST非対応、そしてマスタリング専用ツールの不足という2つの制限を取っても、プロの現場で使う本格DAWの代替とは、まだ言えません。
次に起きうること:ライト層を減らしてでも、DTM層へ届くのか
ここは事実ではなく、予測です。
この戦略を突き詰めれば、Sunoは将来、通常の「ポン出し」画面の役割を小さくし、Studio側の性能とクリエイティビティをより高めるかもしれません。
もし一発生成の回数・ダウンロード・用途に一定の制約を設け、代わりにStudioでのMIDI、ステム、編集、書き出しを充実させるなら、Sunoは従来のAI音楽生成サービスとは違う場所へ進むことになります。
もちろん代償もあります。
テキストを入力して数十秒で「それっぽい曲」を得られることは、初めて触る人にとってSuno最大の魅力の一つです。そこが難しくなれば、遊びやSNS投稿を目的にしたライト層の流入・継続利用は弱まる可能性があります。
一方で、音質・生成の追従性・編集の安定性が十分に伴えば、従来のAI音楽生成を距離のあるものと見ていたDTMユーザーや作曲家、トラックメイカーには別の入口が生まれます。
彼らが欲しいのは「曲を代わりに作るAI」より、ラフ案、セッション奏者、音源、編集助手として自分の制作速度を上げるAIだからです。
Suno Studioが既存DAWへの書き出しを保っていることも、その移行を妨げません。
二者択一ではなく、通常のCreateを低いハードルの入口として残し、Studioを「深く作りたい人が次に進む場所」にする二層構造が、もっともありそうな着地だと思います。
通常画面が発見と遊び、Studioが制作と仕上げを担えば、ライト層を維持しつつ、DTM層にも接続できます。
輪廻タヲ / Rinne Tao
AIを制作に活用するコンテンツクリエイター。音楽、イラスト、映像作品を中心に発信しています。
最新作品やAIに関する考察はXで発信しています。
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