2026.07.16

AI音楽は、音楽シーンのゲームチェンジャーになれるのか?

執筆: 輪廻タヲ ・ AIを活用した音楽・イラスト・映像作品を制作するコンテンツクリエイター

"AI音楽は、音楽シーンのゲームチェンジャーになれるのか?"

先日、AI音楽をやっている知人と、お互いの目標について話す機会がありました。
その流れで、私はBillboardを次の目標に据えていることを話しました。
日本にはまだ、そこを埋めるAI音楽家がいません。
それなら、自分が最初の一人になればいい。
ファーストペンギンになれたら、と考えていました。

そうしたら、こんな反応がありました。

AI音楽が、メジャーになれるわけがない。
チャートだの有名だの、自惚れるのもいい加減にした方がいい。

こういう反応は、おそらく今回が最後ではないと思います。
でも、これはこの人個人がどうという話ではありません。
今、音楽シーンの中で起きている、もっと大きな入れ替わりの、ほんの一例です。

「チャートに乗る資格」を決めていたもの

これまで、音楽が世に出て、チャートに乗るまでには、いくつもの関門がありました。

レーベルに見出されること。
A&Rに認められること。
何年も現場でキャリアを積むこと。
それだけの実績があって、初めて乗る資格を得られる。
そういう構造が、長らく音楽シーンの前提でした。

だから、チャートに乗りたい、有名になりたいという言葉は、その資格を持たない人間が口にすると、身の程知らずに聞こえます。
さっきの反応も、根っこにあるのはこの前提だと思います。
資格のない人間が野心を語るのは、調子に乗っている、と。

その前提が、もう崩れている

でも、この前提は、もう静かに崩れ始めています。

調べてみると、レーベルの後ろ盾も、何年もの下積みもなしに、AI楽曲がBillboardやiTunesのチャートに入っている例が、すでに複数あります。
海外では、Billboardのチャートインから大型契約に至った例まであります。

たまたま一曲がバズった、という話ではありません。
乗る資格を誰が持つかを決めていたゲートそのものが、今ちょうど組み変わっている最中。

ゴールドディスクが並ぶレーベルの扉が崩れ、その先に音の波形が見える

こういう入れ替わりは、実は音楽シーンで初めてではありません。
かつては、レーベルの契約と流通網を持たない人間が、全国のチャートに自分の曲を乗せる方法はほとんどありませんでした。
配信・SNSが、その関門を一段階崩しました。
レーベルがなくても、個人が直接リスナーに届けられるようになったのです。

AI音楽が今起こしているのは、その続きだと思っています。
音楽を作れる技術・時間・資金を持つ人間という、もう一段階手前の関門を崩している。
だからこそ、実績もキャリアもない場所から、いきなりチャートに乗る例が出てくるのだと思います。

数字で見ると、今はどの段階か

ここまでは構造の話でしたが、実際の数字でも、この流れは裏付けられています。

Goldman Sachsの「Music in the Air」レポート(2025年6月)によれば、AI音楽が現在、ロイヤリティプール全体に占める割合は、まだ0.1%に過ぎません。
一方で、アップロードされる曲数で見ると、すでに景色が変わっています。
Deezerでは、2025年4月時点で1日あたり約2万曲のAI生成トラックが投稿されており、プラットフォーム全体の約18%を占めています。
Spotifyの新曲も、4割超がAI生成という調査結果があります。

つまり、「聴かれている量(収益)」より先に、「作られて投稿される量」の方が、すでにAI音楽に置き換わり始めているということです。

そして、この先の数字も示されています。
CISAC(国際著作家作曲家協会連盟)がPMP Strategyに委託した調査(2024年12月発表)によると、生成AI音楽・映像コンテンツの市場規模は、現在の約30億ユーロから、2028年には約640億ユーロへ拡大する見通しです。
そして2028年までに、生成AI音楽は、従来型ストリーミングプラットフォームの収益全体の、約20%を占めると予測されています。

数字だけ見れば、まだ序盤。
でも、量が先に置き換わり、収益が後から追いつく、という順番そのものは、もう動き始めています。

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「調子に乗るな」は、旧体制的な音楽シーンからの自然な反応

だから、この反応は、意地悪でも的外れでもなく、むしろ自然なものだと思います。
ゲートが機能していた時代の感覚では、実績のない人間の野心は、たしかに調子に乗ってるように見えるからです。

問題は、そのゲートが、もう以前ほど機能していないということ。
資格を問うルールが変わっている場所で、旧いルールの感覚だけを押しつけても、実態とはズレていきます。

現実的にみて、AI音楽にはチャンスがある

ゲームのルールが変わっている場所には、まだ資格を持たない人間にも、椅子が空いています。
日本のAI音楽シーンには、まだそこに座っている人間がいません。

だから私は、この空いている椅子に座りにいくのをやめません。
このゲームチェンジが本物かどうか、自分自身で確かめてみたいと思っています。

輪廻タヲ

輪廻タヲ / Rinne Tao

AIを制作に活用するコンテンツクリエイター。音楽、イラスト、映像作品を中心に発信しています。

最新作品やAIに関する考察はXで発信しています。

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